
1. はじめに
近年、マリーナ及びビーチにおける海洋性レクリエーション活動が活発化し、利用者の増大に対応して様々な海岸施設整備がされてきました。その中でも小型船舶の利用促進並びに海事思想の普及、啓蒙は目覚ましいものが見られました。
しかしながら、これまでの海岸施設の整備方向は、一貫して健常者を対象としたものでしかありませんでした。我が国政府の長期見通しによると、日本の社会構造は高齢化が急速に進展し、2020年には総人口の25%が65歳以上の高齢者によって占められると予想されております。また、現在、我が国の身体障害者数は約300万人にのぼると推計され、身体障害者の自立と社会参加の要請が高まっています。
また、海洋性レクリエーションの本質は、健康増進を目的に、18世紀に英国で発展した海洋療法(SPA)が発端で、我が国には明治期に導入されてきた歴史があります。今日では、海の多様な資質を活用する形で、タラソテラピー、アロマテラピーなどが健康・美容のために普及してきております。さらに、欧米先進国では、高齢者及び身体障害者を考慮した各種海洋性レクリエーション施設が整備されております。例えば、車椅子のまま安全に快適に利用できる海水浴場やマリーナ施設の整備、並びに利用に伴う各種機器(車椅子、斜路、車椅子昇降機、トイレなど)の開発が行われています。
これらの状況を踏まえ、我が国の海洋性レクリエーション活動においても、高齢者及び障害者のために、健常者と同様に過ごせるような、安全に優れ、快適で利便性の高い沿岸施設の整備や機器の整備が急務であると考えられます。
そこで、本調査の主要テーマを「人にやさしい海岸施設の在り方に関する調査研究」と題し、21世紀の我が国の国民のために、健康で豊かな潤いのある社会システムを構築するために、その一助となる海の社会福祉施設・機器の研究をマリーナとビーチを対象に行うことにいたしました。
本調査は、以上のように高齢者、身体障害者等が安心して海洋性レクリエーションに参加できるビーチ及びマリーナの整備のあり方について研究するために、その実態を調査し分析し、様々な観点から検討を加えてガイ
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